『タイバニ好きにオススメしたいイン・ザ・ヒーロー』~めちゃくちゃ面白かった~
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~イン・ザ・ヒーローってどんな話?~
唐沢寿明主演の演劇映画です。主人公はアクション俳優。日本ではアクション俳優とは言わないで、アクターって呼ぶのかな。着ぐるみに入ってアクションをしたり、殺陣で斬り殺される役をやったりする人です。
ブルースリーに憧れてアクションスター目指して演劇の世界に入り早数十年という「おっさん」が主役の映画です。夢はブルースリー。でも現実は戦隊ヒーローのなかの人しかやれない。
本編のなかでも言っていましたが「アクション俳優を目指すやつは必ずスタントマンになってしまう。日本ではアクション俳優にはなれないんだ」。こういう諦念を抱いているおっさんが主人公をやっています。
~あらすじ~
ヒーローの中の人「イン・ザ・ヒーロー」をやっている主人公(以下リーダー:戦隊モノのリーダー役、インスタント集団のリーダーをやっているからリーダーと呼ばれている)はある日、自分の出演している戦隊番組の映画のゲストの敵役に抜擢されます。このことに喜んだ彼は、別れた奥さんや子供に久しぶりに名前が出るぞと連絡をします。しかし、それは叶わない。売り出し中のイケメン俳優一之瀬涼(以下:リョウ)が、本来リーダーがやるはずだった役をやることになる。事務所のコネで役を奪われます。
これがこれから互いに意見をぶつけ合わせることになる二人の出会いでした。日の当たらない影の仕事をするリーダーと、常に衆目に晒されている陽のあたる道を歩くアイドルのリョウ。互いに異なる信念を抱くおっさんとイケメン。
何十年も現場とともに歩んできたリーダーと、ひたすらトップを目指して周囲を見てこなかったリョウでは考え方や価値観が異なります。現場に支えられている自覚を持てという(納得いくがおっさんくさい)リーダーと、そんなものをに振り回されずさらに上に行きたいと現場を顧みないリョウ。ひとつの映画の製作過程を通して互いに知り合って行くのが、物語の前半です。
後半では(リョウがオーディションを受けている)ハリウッドの映画を通して、今作のテーマ「イン・ザ・ヒーロー」の意味が問われます。
詳しくは劇場で見てもらいたいですね。(まぁ、後半の感想でネタバレする予定ですが)
~タイバニとの構造的類似点~
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この映画は、いろいろ面白いところがあるのですが、なにより皆が楽しめるのは「酸いも甘いも知った上で夢にしがみついているおっさん」と「才能にあふれて格好いいイケメン」の構図ではないでしょうか。単純な二項対立に見えるこの構図ですが、本編後半にいくと崩されることになります。現実で生きるってのは、いいこともあれば悪いこともある。構造的には当たり前の流れですが、二時間の作品にまとめ切ったのは素晴らしいことです。上手い。
タイバニもそうですよね。はじめは格好悪いおっさんの虎徹さんがイケメンのバーニーに絡んでいくうざい構図です。しかし関係が進むにつれて、互いの背景や考え方がわかってきてバーニーからは尊敬を、虎徹からは信頼を与える関係ができる。ある種、精神的な師弟関係の構図ができあがります。この関係性に僕なんかは「萌える」ところがあるわけです。
それと同じことがイン・ザ・ヒーローでは起こります。タイバニでは6時間かかった内容を一時間にまとめきっているので、この「萌え」に共感する人は是非に見に行くといいよ。めちゃくちゃ楽しいです。
また、タイバニの見所のひとつに「ヒーローとは何か」という虎徹さんのテーマが隠れています。おっさんになっても、力を失っても「ヒーローを目指す」。このおっさんの純情に涙した人も多いはず。
本作でも、その構図は取られています。
タイバニみたいにヒーローが現実に居る世界ではありません。しかし、現実世界にもヒーローはいます。少なくとも主人公のおっさん、リーダーはその存在を信じている。
本作の重要シーンで語られるリーダーの慟哭はホントに胸に来ます。
「誰かがやれるって示さなければいけないんだ!そうじゃなきゃ、夢が持てないじゃないか!」という趣旨のセリフ。どこで語られるのか、ぜひ劇場で見てもらいたいです。
~感想~
おっさんがホントに格好よかったです。
タイバニと類似しているってかいたけれど、ホントに構造としてはマンマ同じです。いやー、面白かった。
ぼくが劇場で見たときは三人しかいなかったんですが、残念。あれは売れて欲しいなあ。とてもいい映画ですよ。
真新しいことはないです。構造も、ここまで書いたのと同じ。
べつにタイバニ見ればいいんじゃね。って感想もあるかもしれないけれど、それでもこれは見ておいたほうがいいと思います。
なぜかというなら、この物語のリアリティ度がホントに高いからですね。
現実にはこのおっさんやイケメンのように「夢は叶う」なんてことは、ない。本作でもそれはわかって作っているんですよ。
知り合いから聞いた話なんですが、殺陣をやっているひとって、ホントに報われないらしいですね。太秦ライムライト?だっけ、あの主役やっている人とかは、ホントに例外らしい。殺陣をやっていて陽のあたるところに出れない人が無数にいる世界。しかし、本作の素晴らしいのは、そこで「でも!」と叫ぶ人がいることですね。
先程もかいたけれど、「でも!アクションには先があるんだって示さなければ、後ろにいる奴らが夢をモテないじゃないか。だから俺はやる。ブルースリーに俺が憧れたように、俺も誰かのヒーローにならないといけないんだ。」(意訳)というリーダーのセリフは涙なしには見られません。こういう必要だけれど報われない仕事に夢を与える誰かが必要というのが、普遍性をもっているから感動するんだと思いますね。だから先ほどの言葉に続いて「リョウ、お前もだれかのヒーローになれよ」ってセリフがもう格好良くて仕方ない。
いやはや、ほんとに素晴らしかった。繰り返すが、素晴らしかった。
みんな見ようぜ。めちゃくちゃ面白いからさ。ほんと、明日にでも見てください。
細かいところを言うなら、全員役者なんですよね。だから「現場の空気感」は知り尽くしている。だからなのか、日常シーンがとてもリアリティがありました。ああ、映画の裏ってこうなっているのか、ととてもリアルに想像できる。
ぼくこれ見ながらアイマスを思い出していたのですよ。
やっていることは同じで、真逆の物語だなって。
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アイマスというのは、トップアイドルになるという夢を追いかけるヒロイン達の友情と絆と夢の物語なんですよね。彼女たちがトップアイドルを目指す理由ってのはいろいろあると思うのですが、そのひとつの理由に「アイドルになれるって夢を叶えることを後ろに示す」というのがあるようにぼくは見てます(アニマスとムビマスを見ただけの感想なので、ガチファンからは違う!と怒られるかもしれないですが^^;)。
まぁ、アイマスが視聴者の共感を産んだひとつの理由にそういう「夢を与える存在」が普遍性をもっているってのが、ひとつあるように思います。
で も、アイマス作品(少なくともアニメ)では、現場の存在というのはあまり描かれることはないように思えます。それは、現場を描けば視点の焦点がどっちらかるということがひとつ理由に上がるのではないかな。また、輝く存在たるアイドルの泥臭い側面を描くのは、それはそれで夢を壊すことになりかねない。彼女たちはステージの裏でも表でも「アイドル」で有り続ける。この一貫性というのが、アイマスの物語の構造にあるんじゃないかなと思います。
そこで、イン・ザ・ヒーローはその逆。その光り輝く存在を支える「影」の夢を描いている。だからこそ、現場にリアリティがあればあるほど、後半が盛り上がるようになっています。
面白いからまぁ、見てみてください。
もちろん、不満点がないわけではないですよ。最後の最後の「世界初」の殺陣のシーン。お話の設定とその表現描写が矛盾する(たぶん矛盾していると思うけれど、、)と、ちょっと萎えないわけでもない。
とはいえ、それ以外はほぼパーフェクトに面白かったです。
今年の映画ベストに入りそうな勢いなのでみんなみるといいよ。ほんとに。
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