Landreaall(15)―みんなそこに引っかかるのかよ―
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チャットで話をしていたら『Landreaall』15巻の話題になった。細かい詳細は省くが、みんな「君は報われない幸せを知らない」に引っかかっていたことが判明(笑)
詳細については海燕さんが記事にわかりやすくまとめておいてくれるので、そちらhttp://d.hatena.ne.jp/kaien/20091129/p1を見てほしい。わたしは書きません。
なので今回は以前の記事http://uzumoreta-nitijyou.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-7886.htmlの補足などをここでしておこうかと思う。
前回は『神のみぞ知るセカイ』の記事の話題に絡めて『Landreaall』をだしたので、今回は『Landreaall』を主眼にしたお話。
わたしが『Landreaall』で感心するのは、全てのキャラが意味を持っていることである。『物語』の構成に無駄なものは用意されていない。最初はよくわからなくても、のちになってわかるよう作られている。それはまるで碁において、先を見据えてその時点では意味のない一手を打っているのと同様の作業である。
一つのキャラの物語における意味がのちに明かされたり、複数存在することなどはざらである。
前者の筆頭は竜胆の兄の竜葵であり、後者はライナスなどがいい例としてあげられる。
ライナスは現時点でも、「DXの友人」「外界への橋渡し(DXが東方へ行くときに口をきいた下り)」「道先案内人」など他にもいくらか重要な役割をこなしている。その中でも最も重要な役の一つが「DXとの対立軸」という役柄がある。
この役は非常に重要な役である。なぜかというと「DXは自分の内面を形に出さない」からである。正直言ってDXは「非常に分かりにくい」。一つの言葉にさまざまな含みを持っていたり、意図的に口をつぐむ癖があるからだ。
しかしそれでは読み手はDXを理解しきれない。そこで有効に機能するのがライナスである。ライナスが物語中で行う行動はDXの内面を浮き彫りにする。それは、今回の
「君は報われない幸せを知らない」
という台詞を引き出したことからもうかがえる。
ではなぜこのようなことが起こるのか?
それはライナスとDXが『似てる』からである。それは姿かたちではなく、能力、あるいは内面をも含んだ全体のことを指す。
その結果両者は「釣り合う」。これはDXとライナスが「対等」ともいいかえられる。
物語中においてDXはさまざまな「役割」を与えられている。たとえば「兄」、「主人」、「王位継承者」、はたまた「英雄」。
そういう中において関係性のパワーバランスは常に均衡をとれない。イオンとの関係においてDXは「対等」であろうか?六甲とにおいては?フィル、ルーディ、ティティはどうだろうか?
答えはノーである。(理由は以下※1で別途記載)
ライナス以外では竜胆が唯一DXと対等になりえたが、彼の場合は、彼の性質と相まって無理となった(※2)。
その点ライナスは「対等」である。それは彼が「商人」だからだ。
「商売」に上下関係はない。売るものと売られるものという「対等」な条件が存在する。
相手に与えるばかりでなく自分も相手から与えられる。それが商売のモットーといえる。
今まで相手に自動的にただ「与える」存在だったDXに、意識的に「俺に(ex.竜創を)与えろ」と云う存在がライナスなのである(代わりに「何か」を与える)。
15巻でライナスがいっている台詞は正しい。
「もし万能の勇者がいたら何をしてくれるか想像する でもいない
だから自分で何とかするしかない
そーやって奴らはお前は「使って」た」
一方的に与える存在というのは、一方的に使われるものなのだ。パワーバランスが崩れている相手にとってDXは「便利なアイテム」と代わりはない。
そう考えると後の「俺の存在なんて意味はない」にもまた別の意味が与えられる。
DXが「フィルのため」に行った行為は、今までの「彼の枠」から外れた行動ではない。DXの「王」の特性。常に上にある性質。便利なアイテム。その結実といえる。
DXが「ないはずのマイナスがフィルから消えただけ」という時のDXの表情を見てみるといい。実に「気持ちが悪い」(そして唯一ライナスだけがそれに「怒り」を抱いている)。
この「気持ち悪さ」に抗することができる(ムカつけるが)ゆえにライナスは「対等」なのだ。
そしてだからこそDXの「鏡」たる資格が生まれる。なぜならどれほどDXが巧妙に「内」を隠しても、ライナスにはそれが漏れ出でる。その「反応」が我々にDXを知る「手掛かり」を与えてくれる。
ついでだから、竜胆の兄の竜葵の話もしておこう。以前の記事(この記事の最初に紹介)で竜葵はDXにとっての「世界の外」の存在という趣旨の話をした。彼はDXの今までのやり方(自分の世界におけるロジック)が通用しない存在で、DXに自分の枠の「外」を意識させるための格好の相手だった。
今回そのことを表す一言がDXから漏れ出ていた。
「ケンカにもならない リドの兄さんって規格外だった」
規格外!
いい台詞です。これはリドの兄自体が本当に規格外なのではなく、「DXの世界」にとっての規格外なんです。
これでDXは「外」を意識しました。
正確には「外の世界」の「人間」を意識しました。
その流れの中で見ると、「ボーイ」が「DXの予想外」に「ブドウを食べた」くだりのあたりの感動が一層強くなります。
『Landreaall』はまだまだ読み解けます。
(結局まずブドウを食べたのがライナスだった)
※1 なぜDXと周りの関係性は対等ではないと言えるのだろうか。それは以下に順に説明する。
まずイオンと六甲。この2人は単純である。DXとイオンの関係性において、イオンはDXに「守られるもの」だからである。もちろん後に成長して兄と対等になることはあるかもしれない(というか、それがイオンの物語かもしれない)、しかしそれは「後」のことであり、今は「まだ」である。また六甲はいまだDXとの関係において「主従」がある。
次にルーディとティティ。この辺は明確な記述がないから(あるいは見落としたか)、普段の行動から推察するしかない。しかし、スピンドル事件の顛末における「DXがいれば…」という意識との関係から「頼るもの・頼られるもの」という構図がみて取れる。
最後にフィル。ここにおいてはDXの言動に焦点を当てた方がいい。
15巻の台詞において
「俺は… つまり …対等でいたいから 敬意… を 払ってる」
「DXが フィルに?」
「俺が フィルに」
と言っています。これは少なくとも二つの取りようがある。
一つは「親しき仲にも礼儀あれを体現した」。ある意味一般的な取り方です。
しかしここの場合はもうひとつの意味。「DXはフィルに『合わせて』対等な関係を保っている」ととった方がいいと思います。その辺の理由は
「DXはフィルのチェシャ猫でいたいんだ」
「そうかも 俺の存在に意味なんてない」
「……」
「なるようになったらそれでいいんだ フィルは怒るかもしれないけれど」
の文脈から判断かな?
しかし、一方が一方に「意識して合わせた」関係が「対等」か?という話ですね。「対等になるため」行動をしているとは「対等ではない」と言っているようなものですから(笑)
ただ、DXの「アノ」パーソナリティは自然と自分が「上」になってしまうパーソナリティなんです。王様の性質を備えている。だから「意識」しないと「対等」になれないともいえる。
※2 これは竜胆の「相手に合わせる」性質のため。※1で言ったようにDXはいわば「王」の性格なんです。自然と自分が「上」になる。もちろん相手が目上だったりすると自分のほうが「下」に来るけど、それは「わざと」下に行っているんですね。賢者に対して王様が「礼」をとるのと同様です。
追記
ランドリオールにおいて世界の区分というか、ルールが分かれているんじゃないかという話をしようかと思ったが、膨らまないのでやめた。
要は、「君は報われない幸せを知らない」に対するライナスの答え「…知りたくもねーよ」は彼が「ランドリオール世界」における「商人」であることに由来するんじゃないかって話。「わからない」でも「気づけないでも」なく「知りたくない」ということ。
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