2023年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
フォト

ウェブページ

無料ブログはココログ

« 今日買ったもの | トップページ | やっちまったね »

2009年9月15日 (火)

『384403km―あなたを月にさらったら (ティアラ文庫)』 読了

51eflaw5arl__sl500_aa240_ 百合小説ってやつを読んでみようかと思って手を出したのだが、これがなかなかに面白かった。

幼稚園以来9年間理世に片思いしている美由紀の恋物語。小中学校は別々だったけど高校(女子高)で一緒になって、告白したいけどできないでいる日々を過ごす。そしてある日理世と先輩がHしているのを見て、美由紀は先輩から理世を取り返すことを決意する。

そんなあらすじの本作だけど、これが予想に反して興味深かった。まぁ、発売がフランス書院なのでそれなりにエロ要素はあるんだけど、そこに留まらない魅力があった。

この小説を読んでいて面白いと感じたのは、キャラクターの背景がとても希薄だということ。美由紀と理世にはそれなりに過去が準備されているが、それも必要最小限。主人公の美由紀の背景情報などは「実家が八百屋・小中は目立たないようにしてた」程度、またヒロイン(?)の理世もそれはほとんど変わらない。与えられる情報は「何故」このような人間に育ったのかというワンエピソードぐらい。理世の美貌の説明の根拠づけに「母親が元女優」というのがつけられているくらいで、小説の主要人物の割には読者に提供される情報がほとんどない。それ以外の人間に関していってもほぼゼロと言っていい。

登場キャラクターの背骨が存在しないのに物語として成立しているのがありありとわかる作品だ。

実際美由紀が理世に好意を抱くきっかけのシーンはない。はじめ理世が『嫌い』になり、嫌いぬいていつの間にかそれが反転してしまっている。そこに理屈などは存在せず、物語の設定上『そう』なっている。そしてそれから9年間一度も会わないのに美由紀は理世を想い続ける。対して理世も美由紀を9年越しなのにすぐに識別する。このあたりも物語が『そう』設定されているのだろう。

これはフェイトを始めとする奈須ワールドと同様である。物語の構成上登場人物は否応なく『そう』生まれつく。生れながらの殺人鬼、自己を省みず他者を助けようとする正義の味方。その次元において美由紀や理世は彼らと同列に語られるべき存在であるように思う。特に顕著なのは美由紀だろう。

 (私は、きっと『きもちわるい』)

 自分の中にある理世への感情が、人目を憚らねばいけないものであることは、本当はとっくに理解していた。ひょっとするとそれは、会えなくなったことでおかしな方向にねじ曲がっただけで、再開すれば健全なものに戻るかとも思っていた。逆だった。私は自分がおかしいことを確認しただけだった。図らずも、幼稚園の頃の私の告白は、すべてをいい表してた。『私のものになって』。私の胸にある、すべてを。

(p62より)

彼女は自分が理由もなく『そう』生まれついた存在であることを自覚している。物語上美由紀はレズビアンとは書かれてない。おそらく違うだろう。彼女は『理世を愛するため』に生み出され、『そう』生まれつかされた。彼女が反応するのは理世に対してだけであり、物語上設定された理世の性別が女性だったということなのだろう。彼女は理由もわからず、理世を愛する。そうせずにはいられない。

これは物語上彼女が有する特性である。彼女の相手は『理世一人』。このとき彼女はひどく孤独な存在である。なぜなら彼女は愛する者を限定された存在で、そうではない普通の人間とは異なる。異性愛者であろうと、同性愛者であろうとそのパートナーの可能性は多様に存在する。しかし美由紀は『理世愛者』である。世界から省かれて存在している。

彼女は小学校の授業で月の裏側に自分の墓を書く。

私は月にひとり。ずっと、ずっと。そう思っていた。そのイメージは寂しくて、でも実は居心地も悪くなかった。誰の目も届かない世界で、誰にも邪魔されず、静かに朽ちていく自分のイメージは、どこか、ほっとする冷たさを持っていた。安心できた。

私だけの世界。

私だけが月にいた。

理世は(暖かな)地球にいて。

(友達のキス)

―そう、脱出して地球にたどり着いたと思っていた、いまも。

私は月にひとり。

(p82より)

これは世界の中から省かれた存在であることを月にいることを比喩としてを表している。しかし、世界から省かれた存在である美由紀はそれを自分の意思でもって破り、世界に参画したいことを願う。

小心者の私のひそかな願い。

    もしも、

    あなたを月の裏側に攫ってしまえたら、私は。

    愛の牢獄に閉じ込めて、

    永遠に離さないのにー

……でも。

    私は『やめる』ことにした。

    (本当に『やめられるのか』、自信はないけれど)

(p91~93より)

ここで、()内にで美由紀の不安が表わされる。

初めから『そう』作られている美由紀が別の道を選択できるのか。しかし、美由紀は内心では無理であろうと考えている。なぜなら彼女は『そう』生まれついてしまっている。これは理屈抜きの事態である。なにか理由があって理世を愛したのではなく、物語の必然のためにそのように生み出された存在が美由紀である。

そして確かに運命の導かれるように美由紀は理世と先輩のHを見てしまい。やめることはできない。

その後、なんだかんだあって理世と美由紀は結ばれる。

その結果分かることは、理世も『そう』生まれついた存在なのだろうということ。

p124の理由のない拒否

p160のあたしは、いまいち、恋愛ってものがわからない。

というのはそこから由来するものではないかと思った。

百合小説を読んだことはないからよくわからないのだが、みんなこんな感じの小説なのだろうか?

ちょっと手を広げてみようか。

追記 今回の読みは「こうも読めるかな」って感じで書いてみました。

参考URL

« 今日買ったもの | トップページ | やっちまったね »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

趣味」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『384403km―あなたを月にさらったら (ティアラ文庫)』 読了:

« 今日買ったもの | トップページ | やっちまったね »

カウンター

カテゴリー

楽天アニメ

楽天コミック

ブログパーツ

  • いいねボタン